和解する脳 – 未来志向の紛争解決のために

和解する脳
和解する脳 池谷 裕二 (著), 鈴木 仁志 (著) /講談社

「和解する脳」という題名をはじめ見たときにはなにかなと思いましたが、弁護士と脳研究者が日々起こるもめごとや意思決定といった人間の活動を生理現象として体の中でなにが起こっているかを対談という形で対比させているところを興味深く読みました。

なぜ争いは起こるのか

この本の中で一貫して感情という「情」と理念・合理性といった「理」を取り上げて話が進んでいきますが、そもそも、なぜ人間は争いを起こすのかについては、言語を取得したことが大きな要因であり、それによって有限であることが理解できて、有限性が理解できなければ、争いは起きないのだそうです。
また、紛争は情の部分で限度を超えたところで起こるものだけれども、それが理屈で説明できると感情から離れた論争になってかえって解決を難しくしてしまうもので、専門的な立場で法的な説明やアドバイスをする場面でよく考えなければと感じました。

和解よる解決

そして、和解に向けては、とにかくよく話を聞いて、感情に配慮して信頼関係を築いていくことが大切で、信頼関係ができあがったところで客観的な情報を話してあげることによって、当事者が自分で解決へ向けて考えることができるようになるのだと、また、自分で決断したことに対しては、すごく肯定的に捕らえることができるものであり、自分で解決できたことに満足感を得ることができるということです。
裁判は過去に何がおこったことを探っていくものであるのに対して、和解は、これからどうするか、将来に向かってどういう決断をするかを考えていく作業でなのだと書かれています。

土地家屋調査士として

この本を読んで、自分に立ち返って考えてみると、土地家屋調査士は土地の境界を扱い、当事者の方と現地で立ち会って確認することを行いますが、これが一般の方にとってはとても不快なものだということです。
土地の境界に関わるものとして、ほんのささいなことから紛争に発展することがあることを心に命じ、できるだけ気持ちを思い、どのようにすれば誤解がなく、理解してもらえるのかを日々考えることが、専門家としての責任であると思いました。